年明け早々の真夜中。 愛知県は奥三河の最深部、北設楽郡豊根村富山地区で行われた「御神楽祭り」を見学してきました。 この祭りで奉納される神楽舞はひじょうにユニークであることから、知る人ぞ知る祭りなのですが、民俗学的に高い評価を受けているものの、観光客はほとんど来ません。 この村の財産である神事を守るために無形文化財の認可をあえて受けずに(観光化されることからくる世俗化を避けるために)村人の熱意で粛々と神事を守り続けている、隠れ里の祭りです。 数時間かけて行われる神事は仔細を説明するには難解なのですが、神社が見学者で賑やかになるのは湯たて神事前後から。気温もぐっと下がる20時を過ぎた頃でしょうか。 釜で湯を煮えたぎらせ、その湯をもちいた神事を執り行い、無病息災や五穀豊穣などを祈願し、七立ちという式の舞が奉納されます。 その後、待ちに待った面の舞、“面立ち”が行われます。 「どんつく」という獅子舞(見学者はみかんを手に持って獅子の口に含ませます。獅子様に自身のみかんを食べてもらえたなら無病息災間違いなし!?)や黒尉の面をかぶって叫びながら鼻をつまんで飛び回る「はなうり」に、ボロ衣をまとい、シラミをとる真似をする「シラミふくい」の道化やちょっかいを出される巫女様「女郎面」等、神々の素朴な舞とユーモアたっぷりの神楽が奉納されます。 さて、この“面立ち”と呼ばれる仮面の舞のスタートは夜中の12時頃。極寒です。やかんで温めた熱燗片手にしんしんと冷え込む中の真夜中の神楽をみながら、今年の無病息災を祈ります。 この舞庭で仮面をつけ、衣をまとった瞬間に神が舞手に憑依するのだとか。 神楽の舞を行うのはもちろん地元の村の方。ですが、一たび神楽を舞えば、本当に神が降りてきたよう。 神様が近く、そしてとても有難く感じるのです。 |